自転車屋として気になるのは、雨の中を走ったことより、そのあと濡れたまま何日も置かれることのほうです。
自転車は、雨の中を走ることも考えて作られています。困るのは、水が抜けないまま時間がたつこと。
さびは、雨の日ではなく、雨のあとの数日で育ちます。
なぜ濡れるとさびる?
鉄は、水と、空気の中の酸素にふれると、少しずつさびに変わっていきます。
とはいえ、表面の水は、乾けばそれまでです。問題は、乾かないすき間に残った水です。部品と部品の合わせ目や、ねじのまわり。そこに入りこんだ水は、風が通らないので、なかなか乾きません。
跳ね上げた泥も、水を抱えこんだまま部品に張りつきます。泥の下は、ずっと湿ったままなんです。
さびやすいのはどこ?
- チェーン。雨で油が流れて、鉄がむき出しになります。茶色くなると、動きも重くなります
- ボルトやナットのまわり。ねじ山のすき間に、水がたまります
- ワイヤーの出入り口。ブレーキや変速のワイヤーは、細い管の中を通っています。管の口から水が入って中でさびると、レバーが重くなります
- ベルや鍵穴。中に水が残ると、鳴りにくく、回りにくくなります
拭く順番はこれ
乾いた布を2枚用意してください。1枚はきれいなところ用、もう1枚はチェーン用です。
- サドル。座面の縫い目から水がしみこむと、中のクッションがなかなか乾きません。表面の水をしっかり取ります
- ハンドルとベル、ワイヤーの出入り口。管の口のまわりの水滴も拭き取ります
- 車体と、ボルトやナットのまわり。泥がついていたら、水気といっしょに落とします
- 車輪の縁(リム)と、ブレーキの当たるところ。砂や泥が残ったままブレーキをかけると、縁やゴムを削ってしまいます
- 最後にチェーン。もう1枚の布で、包むようにして水気を取ります
上から順に拭くのは、水が下へ垂れるからです。チェーンを最後にするのは、布が油で汚れるから。
覚えるなら、合言葉は「拭くのは上から。油は乾いてから」。
疲れていて全部はできない日は、チェーンと車輪の縁だけでも。走る部分と止まる部分なので、ここを拭くかどうかで差が出ます。
油はいつさす?
チェーンの油は、雨で流れています。拭いたあと、乾いてからさしてください。
濡れたままさすと、水をチェーンの中に閉じこめてしまいます。一晩おいて、表面が乾いてからが目安です。
油は、チェーンのつなぎ目に少しずつ。多すぎると、次の雨の日に泥を集めます。
屋根がないときは?
屋根の下に置けるなら、それがさびを遠ざける近道です。雨に当たる回数そのものが減るからです。
屋根がないなら、自転車カバーをかけます。ただし、ここに落とし穴があります。
濡れたままの自転車にカバーをかけると、中に湿気がこもります。雨は防げても、カバーの中が蒸し風呂のようになって、かえって乾きません。
拭いてからかける。晴れた日にはカバーを外して、風を通す。この2つで、カバーは味方になります。
電動アシスト自転車も、ふつうの雨の中を走るぶんには困らないように作られています。ただ、充電の差しこみ口が濡れたまま充電するのは避けて、拭いて乾いてからにしてください。
雨の日のブレーキは
雨の中を走るときのことも、少しだけ。
車輪の縁が濡れていると、ブレーキのゴムとのあいだに水の膜ができて、すべります。晴れの日と同じつもりで握ると、止まるまでの距離が延びます。
早めに、軽く何度かブレーキをかけてみてください。縁の水が払われて、効きが戻ってきます。
道路の白線やマンホールのふたも、濡れるとよくすべります。曲がる前に、スピードを落としておきましょう。雨の日だけブレーキが鳴るなら、ブレーキのキーキー音の話も読んでみてください。
気になったら店で
拭いて油をさしても、きしむ。レバーが重い。さびが広がってきた。そんなときは店で見せてください。サイクルスポットの工賃は全店同じです。
| 作業(こんなときに) | 工賃(税込) |
|---|---|
| 油さし 雨のあと、チェーンがきしむ・乾いている |
330円 |
| 一式点検 さびや動きの重さが、あちこち気になる |
2,750円 |
一式点検では、ブレーキ、タイヤ、チェーン、変速機、ライト、鍵など主なところを見ます。部品の交換が要るところが見つかったら、その内容と金額をお伝えしてから進めます。
ほかの作業の料金は工賃表にあります。
次の晴れ間に
雨の夜に、全部をやりきらなくてもかまいません。その日はチェーンと車輪の縁。晴れた日に残りを拭いて、油をさす。
濡れたまま過ぎていく数日を、乾いた数日に変える。それだけで、さびの育ち方は変わります。